平成25年度青森大会長からのごあいさつ

Artとしての矯正歯科 -"技"の視点から-

  平成25年5月25日(土)、26日(日)の両日、弘前市の弘前文化センターにて第29回東北矯正歯科学会大会が開催されます。弘前市で開催するのは、平成7年以来の18年ぶりとなります。

  今回のテーマは「Artとしての矯正歯科 —“技”の視点から—」とさせていただきました。Artというと芸術と考えるひとも多いのですが、ここでのArtとは匠、経験、技術といった意味のことです。“医療とは、Scienceを土台としたArtである”とは、内科医ウィリアム・オスラーの言葉ですが、いくら本から勉強しても、実際の患者さんの治療ができるわけではありません。ことに矯正歯科では、患者さん一人一人で治療法は変わり、ワイヤー屈曲などの臨床技術も必要です。 歯科の中でもArtの占める割合が多い臨床分野かもしれません。

  基調講演としては、弘前大学名誉教授、松木明知先生に「医療におけるScience とArt —臨床におけるArtの重要性の再認識—」という演題で講演していただきます。松木先生は“全静脈麻酔法”という新しい麻酔法を開発し、麻酔医として世界的に有名な先生ですが、日本医学史、森鴎外、郷土史についても大変造詣が深く、今回はArtについてお話いただきます。また三大学若手シンポジウムでは、奥羽大学の松山仁昭先生、東北大学の北浦英樹先生、岩手医科大学の水川卓麿先生に「最近の矯正臨床」についてお話しいただきます。特別講演1では横浜市の大野粛英先生(大野矯正クリニック)に「江戸時代の歯科事情 —歯みがき、歯痛、入れ歯、抜歯、矯正—」という演題でお話しいただきます。ご存知のように大野先生は歯学史の日本での第一人者で、先人達はどのような工夫をして歯科治療を行ったか、興味深い話を聞けると思います。そして特別講演2では仙台市の菅原準二先生(歯科一番町SAS矯正歯科センター)に「当たり外れのない矯正治療を目指して —再治療症例から学ぶ—」という演題でお話しいただきます。ヒポクラテスの格言に“Life is short. Art is long.” という有名なものがありますが、これは“人生は短いが、医術を習得するには時間がかかる”という意味です。うまくいかなかった症例から学ぶことは多いと思います。そして最後に、東京都の尾崎武正先生(尾崎矯正歯科クリニック)、金田一純子先生(国立成育医療研究センター)、大阪府の黒田康子先生(くろだ歯科・矯正歯科医院)によるシンポジウム「Artとしての矯正歯科」を行います。いずれの先生も、矯正臨床歴40年を超えるベテランの先生で、長い臨床経験から得た貴重なエッセンスをお聞きすることができると思います。

  学会の時期、桜はすでに散っていますが、若葉の美しい季節です。りんご王国弘前では、この時期、りんごの花が咲き誇ります。歴史と文化の町、弘前に是非とも多数お越しいただくようお待ちしております。

広瀬 寿秀
平成25年度青森大会長
広瀬 寿秀